a New Year's card
白い息が漏れるのも、手袋をつけてない手が容赦なく冷えてゆくのも構わずに、そわそわと自分宛ての郵便物を確かめる。
今日は郵便屋の一番忙しい日だ。
自分に届いた束をわくわくしながら手にして、ぺらぺらとめくる。
その中の一枚に、これだ、と思って宛名の側にひっくり返すと、そこにはやっぱり一番見たかった名前があった。
すぐ近くにあったちょっと曇った窓には、俺の姿がかすんで映って顔が見えないけど、きっと今、すげー笑顔をしてる。
他のもすごく嬉しいけど、やっぱり兄ちゃんからもらうのが一番嬉しい。
去年もらえなかったし。前に言ったときは当たり前だって怒られたけど。その代わりにあの日、もっと大切な言葉をもらったけど。
葉書の束を、手にしっかりと掴んで、ドアに向かった。
玄関のドアを開けるその一瞬ももどかしく、大声で祝う。
「兄ちゃん、あけましておめでとう!」
昨日からここに泊まっていた兄ちゃんがそこにいた。
槙原先生に潰されて机に突っ伏していた兄ちゃんが、冬眠から起きた熊みたいにむくりと顔を上げた。
本気で飲まされたらしくて、まだお酒が抜けきっていないのか幾分か顔が赤かった。
「さっきも言っただろうが……」
もちろん日付が変わった瞬間にも言った。おめでたいことは何回あってもいい。
二日酔いに痛む頭を押さえていた兄ちゃんが、こっちを見た。
最初に息を弾ませた俺の顔を見て、その目が、俺の手に持った葉書に動く。
兄ちゃんが返事じゃなしにくれた、かなりレアなブツだ。
その視線が俺の顔に戻り、赤い顔がこっちを向いて笑ってくれる。
「ああ、おめでとう」
幸せな、新しい年の始まりだ。
Happy new year and congratulations on your first anniversary.
|